エッセイ

天下の名湯!草津温泉で旅の恥を存分にかき捨てる【面白いエッセイ】

草津温泉湯畑10月

先日、GOTOトラベルを利用して群馬の草津温泉に遊びに行ってきた。
このブログでも度々書いているが私は草津温泉が大好きだ。

温泉のランキングでも10年以上連続で首位を獲得しているというこの草津温泉、
もうランキング1位の温泉なんだからここに行っておけばまず間違いないだろうという考え方から、ほぼ毎年一度は訪れている。

草津といえば有名なのは湯畑である。

ただ温泉に泊まりにきたというだけではなく、視覚嗅覚からも温泉パワーを感じられるところが草津の魅力であると私は思っている。もくもくと漂うこの湯畑の湯気を浴びるだけで、シルバーのアクセサリーなどは真っ黒に変色してしまうほど草津温泉は凄いパワーを持った温泉なのである。

草津温泉湯畑10月

今回我が家はGOTOトラベルで草津に行こう!!と急遽、週末の草津行きを決めたのだが、その週の週末はすでに台風の影響での大雨が予測されていた。

そのため今回は、いつものように「湯畑周辺」という形での宿の探し方ではなく、
雨でも飽きずに遊べる施設が充実しているという部分を重視してホテル探しをした。

そして今回は草津のメインである湯畑から少し離れるが、屋内プールや遊戯施設が併設されているという「遊べるホテル」を予約したのである。

草津の街中に入ると、さっそく強烈な硫黄の香りが漂い、その香りは車の中にいても感じられるほどである。

この独特の硫黄の香りに“草津に来たんだな〜♪”という実感がわき、ワクワク感の高まりに胸を躍らせていると、後部座席に座っていた子供たちが「なんかくさい」と騒ぎ出した。

「めっちゃくさい〜オナラのニオイだ!」「ママだ!」と沸く子供たち・・・

おい・・・
何が「ママだ!」だ。

天下の草津温泉に向かって失礼極まりない。

「ママだ」「ぜってーママだ!」と盛り上がる旦那と子供たちに向かって、ママだ、じゃねーし!!!ぶっ飛ばすぞ!!と、温泉街にふさわしくない怒号を飛ばしながら車を走らせること数分・・・。

紅葉で美しく色付いた木々に囲まれた、目的地のホテルに到着した。

屋内プールが併設されているホテルということで事前にホームページを確認すると、水着はホテルでレンタルもできるということだったのだが、以前に別の温泉施設のレンタル水着では自分史に残るほどのひどい目に合った経験があるため、今回はその二の舞を踏むわけにはいくまい、としっかり自前の水着を用意した。

だが今回泊まったホテルのプールでは、プールエリアでは水泳キャップが必須、という私にとって非常にハードルの高いキマリがあった。

せっかく自前の水着を持参しても、水泳キャップって・・・

それ絶対面白くなるやつじゃん・・・

水泳キャップ必須のキマリに一瞬おじけづいたが、同時にちょっとそんな面白い姿の自分を拝んでみたいという、怖い物見たさの期待感との狭間でドキドキしていたことも紛れもない事実であった。

そんなドキドキと共に、子供たちを連れて更衣室に向かった。

プールが大好きな子供たちは大はしゃぎで着替えを始めた。
私もそそくさと着替えを始めたのだが・・・

あれ??
無い・・・どこにもない。

なんと私は、こともあろうにビキニトップのみ持参し、ビキニのパンツの方を自宅に忘れてきてしまったのだ・・・。

いやいやいや・・・ちょっと待て・・・

以前、レンタル水着であんなにひどい目に合ったのだから、今回は絶対自前を持っていくぞ!と意気込んでいたのに・・・

水泳キャップはバッチリ被っておきながら、水着の下を履かずにスッポンポンでプールに出現などしたら、警備員さんに即、捕獲されるに決まってる。

いくら私だって、駆け付けた警備員さんに、「水泳キャップなら被ってますけど」などと高度な屁理屈をこねる勇気など持ち合わせていない。

いやその前にまともな大人として公衆の面前でスッポンポンはそもそもアウトだ。

そんなわけで子供達のプール遊びの付き添いは主人に任せることにし、私は洋服のままベンチに座り、楽しむみんなをのんびりと眺めていた。

それにしてもやはり天気予報通り、外はかなりの雨が降り続いている。

今回はやはり、王道の湯畑周辺の宿よりも、こんなふうに温泉以外にもお楽しみがあるホテルをチョイスして本当に良かった。

子供たちがひとしきり遊び終わった後、お待ちかねのお風呂に向かうことにした。

草津のお湯は、入るたびに毎回、本当に効くなぁ〜と実感がわくスゴイお湯である。

入浴後のぽかぽか感がここまで長く続くのも、他の温泉ではあまり感じたことのない草津ならではの温泉効果だ。

長女が2歳のころ草津温泉にきてよく暖まってから寝かせたところ、毎晩必ず夜中に起きてぐずってしまっていた長女が朝までぐっすり眠っていたことに驚いたことがあったが、これも草津ならではの温浴効果だったのではないだろうか。

そんなわけで私と子供たち二人はウキウキしながら大浴場に向かった。

脱衣所で子供たちの髪を結んで入浴の用意をさせると、先に洗い場に行かせた。

そのあと私も急いで洋服を脱いで入浴の準備をしたのだが、先ほど脱衣所に入ってきたお掃除の係の従業員の中年女性が、私の真後ろでモップを倒してモップの先を新しいものに交換し始めたのに気づいた。

私は特にそれを意識することもなく自分の用意をしていたのだが、入浴の準備が整ったため、小さいタオルで体の前を隠すと回れ右をしてそそくさと大浴場の入り口に向かって歩き始めた。

その時である。
お掃除の係の従業員の中年女性がモップの先を交換し終わり、突然モップを持って立ち上がったのだ。

私は突然持ち上がったモップの柄に足を引っ掛け、バランスを崩すと「ギャー!」という叫びと共に全裸で床に転がった。

痛い・・・
痛い・・・

足も痛いが何より他のお客さんの視線が痛い・・・。

私は転がった本人なのであくまでも予測ではあるが、他人からの目線で、温泉の脱衣所で絶叫と共に全裸で床に転がっている女などというのは、想像を絶するほどマヌケで情けない姿に映るのではないだろうか?

私は恥ずかしさのあまり、痛む足のスネをさする余裕もなく急いでタオルを拾うと、振り向くこともせず大浴場に駆け込もうとした。

お掃除の女性は自分のモップにつまずいて私がひっくり返ったのに気が付くと、駆け去る私の後ろから「お客様!!申し訳ございません!!」と謝っている。

私はちらっと振り向くと「大丈夫です(汗)」と小さく合図をし小走りのままその場を去ろうとした。

だが責任を感じたお掃除の女性は再度、大きな声で「お客様!!!大丈夫ですかッ!?」と呼び止めてくる。

私がちらっと振り向くたび、他のお客さんたちは先ほどマヌケな姿で転んでいた私の顔を一斉に凝視する。

私は仕方なく観念して立ち止まると、しっかりと振り返り「本当に、大丈夫。」とティモンディの高岸ばりの口調で宣言した。

私をいたわる気持ちがあるなら・・・もしあるのならば是非ほっといてください・・・

“旅の恥はかき捨て”という言葉がある。

だが脱衣所に全裸で転がった女のマヌケな姿は、わりと他のお客様の旅の思い出に鮮烈に刻まれてしまったのではないかと考えると、どうにもいたたまれなくなり、私は入浴前にも関わらず体がのぼせてくるのを感じた。

そっと大浴場のドアを開け、後ろ手に閉めると、視線の先にうちの次女(7歳)が【打たせ湯】を頭頂部に直撃させ、後光の差したカッパのような姿になっているのが目に飛び込んできた。

『おい!!!やめろ!!!!!!(怒)』

私は必死に次女を制止すると近くに呼び寄せた。全く油断も隙もあったものではない。

もう今日という今日は誰にも注目されたくないのに、また全裸で大声を出してしまったではないか。

刺客が多すぎる・・・。

しかしここは天下の草津温泉。神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩などの他に、心の傷にも絶大な効能があるようだ。お湯に浸かったとたん、先ほどの大恥などもうどうでもよく感じてくるほどの幸福感に包まれ、私は大きく息を吐いた。

草津温泉、
やっぱ最高〜(涙)

思えば今年は頭から色んなことが起き過ぎている。コロナで生活が一変し、自粛という名のもとに子供も休校、みんな家に缶詰になり、マスク生活にソーシャルディスタンス。

そして今回、そのコロナのおかげでGOTOトラベルがあり、我が家はお得に草津に旅行に来ている。なんとも不思議な気分だった。

ポカポカに暖まって部屋にもどると、主人がホテルの案内のパンフレットを眺めており
『たまにはマッサージでもしてきたら?』と提案してくれた。

せっかくだから60分コースにすれば?とありがたい言葉をかけてくれたのだが、部屋に戻ってきた私はなぜか妙にお腹が張っており、今背面からマッサージなどで強く押されたりしたら、即座にブーブークッションと化し、新たなピンチを巻き起こしてしまうのではないかという強い不安にかられた。

このブログではすでにおなじみだが、私は20年近く前から、過敏性腸症候群(IBS)を患っている。お腹のハリはこの過敏性腸症候群(IBS)の症状のひとつだ。

どうしたものか・・・。

せっかく草津温泉にまでやってきて、しかも夕食の前に『マッサージでもしてきたら?』などと神のような提案をされているというのに・・・。

そこで主人に、『今お腹がパンパンだから、押されたらブーブークッションみたいになって飛んでいくかもしれないんだけど』と素直に言ってみた。

すると主人は
『知らねーよ!!(呆)』と、心の底からの“知らねーよ顔”でウンザリしていた。

まあ、知らねーよなぁ。
私だってこんなヤツ(腹)など『知らねーよ』である。

もう、ブーブークッションだっていいじゃないか。IBSだもの。

私はしばらく悶々と考えているうちに悟りの境地に達したような気分になり、徐々にみつを寄りの思考回路にシフトしていくのを感じた。

何度も言うが、旅の恥はかき捨てなのである。

先ほど全裸で脱衣所の床に転がったことを思えばもうなにも怖いものなどない。

思い立ったらすぐ行動だ。
私はガスで膨らんだ腹をさすりながらさっそくホテルの内線でマッサージ店に予約をし
15分後にはマッサージ台の上に横たわり、よだれを垂らしていた。

マッサージで癒され、すぐに爆睡モードに入ってしまったため、意識のない私が実際にブーブークッションになっていたかなど知る由もない。やはり開き直ってマッサージにきてよかった!!!

肩や背中も楽になり、これから夕ご飯だ!と考えるだけでワクワクしてくる。

夕ご飯はバイキング形式で、とても豪勢なものだった。

レストランでは料理を取るたびに手袋とマスクの着用、また以前は料理のそばに置いてあったトングが無くなり、料理を取りわけるたびにお箸を変えるなど、コロナ対策が徹底されていた。

感染対策がしっかりされていて安心だと思う反面、やはり以前のように気楽に食事をできる日が早く戻ってきて欲しいという気持ちを強く感じたのもまた事実である。

気を取り直してたくさんの料理を盛りつけ、お酒の飲み放題を注文した。

このホテルのレストランでは、飲み放題を注文した人は腕に紙製のリストバンドをつけられ、お酒のカウンターでそのリストバンドを見せると、スタッフの方がお酒をついでくれるというシステムであった。

リストバンドを見せるだけで大好きなビールを何杯でもついでもらえるなんて・・・
湧き上がる喜びにむせ返りそうになる。

私は料理とビールを交互に取りに行き、順調に飲み進めていた。

だが、5杯目のビールをもらいに行こうと立ち上がった瞬間、先ほどまで腕についていたリストバンドが見当たらない・・・

あれ!あれ!!

私はパニックになり立ち上がると体の色んなところをパタパタして探ってみたのだが、リストバンドはどこにも無かった。

先ほどまで、お酒のカウンターに何度も現れては、どや顔でシャキ―――ン!!!と勢いよくリストバンドを提示してイキがっていたのに、リストバンドを無くしたとたん、印籠を無くした水戸黄門のようにオロオロし出す自分が本当に嫌いだ。

仕方なく、「すみませーん(泣)!」とスタッフの方に声をかけて立ち上がると、『ママ、髪の毛にリストバンド付いてる』と、子供たちがリストバンドの行方に気付いて爆笑しながら教えてくれた。

私は再度スタッフの方に「すみませーん(泣)!」と謝りながら椅子に腰を下ろした。

なんでまた私のリストバンドは、よりによって髪の毛なんかに付いてるんだ・・・
いちいち驚かせやがって・・・

そんなわけで、一筋縄ではいかない草津旅行ではあったが、これももはや想定の範囲内である。これくらいのハプニングで済んだのであれば、私にしては上出来だろう。

一泊二日の旅の恥をかきにかき捨て、今回も大好きな草津の街をあとにした。

そしてまだあの日から2週間しかたっていないにも関わらず、もうすでに草津温泉が恋しくなっている私なのであった。

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冨岡さわこ
冨岡さわこ
こんにちわ!湘南に住む、占い師でエッセイストの冨岡さわこです。(✿✪‿✪。)ノ すれすれの人生、避けて通れないならネタにしよう! わたしを悩ませるあんなこともこんなことも、こんなことも。 現在、中学生と小学生の二人の娘を持つ母です♪ 過敏性腸症候群IBSのおかげで、人生に無駄なピンチが多めに降臨。