ここ数か月、自宅の電化製品やモノが続々に壊れるという事態が続いている。
洗濯機、電子レンジ、食器洗乾燥機、ティファールのポット、ドライヤー、私の携帯、給湯器にユニットバスの栓・・・。しまいには車も異音がし出してしまい、修理工場で見てもらう羽目になった。
そしてコップもふとした時に次々に割れてしまい、ほとんど新しいものに買い替えた。
あまりにも物が壊れるという状況が続くので、気になってちょっとネットで調べてみると、色々なサイトでスピリチャル的には【転換期である】ということが書かれていた。
転換期か・・・
そういわれると何か良い暗示のような気がしてしまうが、現実問題、次々に壊れていく電化製品や食器を買い替えしなくてはいけないのはお金もかかるし、だましだまし使えるものはなんとか使っていかなくては厳しい。
完全に動かなくなったものは仕方なく買い替えや修理をしたのだが、お風呂はちゃんと動く時と動かない時があり、何度か沸かし直すとなんとか入れていたので無理やりそのまま使い続けていた。
ところがつい先日、完全にユニットバスの栓が浮いてしまい閉まらないという状況に陥ってしまったため、とうとうお風呂にお湯をためることが一切できなくなり、メーカーに電話をして修理をお願いすることとなってしまった。
メーカーの担当者の男性から折り返し、訪問日の確認の電話をもらい、翌日の午後3時から5時の間に伺います、と言われ来てもらうことになったのであった。
そして修理に来てもらう約束の当日。
私はよりによって朝から絶不調であった。
このブログでは何度もお話しているのでお馴染みとなっているのだが、私は20年近く前から、過敏性腸症候群(IBS)を患っている。
IBSとは、 血液検査や大腸内視鏡検査などで腸に異常が認められないにもかかわらず
下痢や便秘を慢性的にくりかえす疾患 であり、私の場合はメインが下痢で展開される通称“下痢型”だ。
調子が良い日には割となんともないこともあるのだが、よりによって知らない人がやってくるそんな日、私は朝からお腹を下しまくり、フラフラになっていた。脱水症状に近いような脱力感があり、もうすぐ修理のお兄さんがくるな・・・と思いながらもちょっと横になって休憩していると、3時過ぎに携帯が鳴った。
どうやら修理のお兄さんのカーナビに我が家が表示されないらしく、近くまでは来ているのだが道に迷っているというのだ。
『今、どの辺りですか?何が見えます?』と、我が家の場所を説明しようと起き上がり通話をしていると、再び私の腹はゴロゴロ・・・とうなりだしたのである。
『またお前か・・・(怒)』
私は自分の腹に苛立ちながら一生懸命に耐え、道の説明を続けた。だが、どんどん降下してくる我が腹に限界を感じた私は、ついに携帯を持ったままトイレに駆け込んだ。
トイレに座ったまま説明をしていたところ、徐々に修理のお兄さんが我が家の方面に軌道修正して近づいてきているようだったので、私が『あ、そこからもうすぐです。私、外にでて合図しますよ』そう言って便座から立ち上がった瞬間である。
まさかのトイレの自動洗浄により、
《ザ―――!!!!》と勢いよく水が流れる音が鳴り響いた。
ヤバい・・・
自動洗浄なの忘れてた・・・立ち上がったら勝手に流れちゃうんだった・・・(恥)!!!
お兄さんに、『うわ!こいつトイレに座って電話してたんかい!!』と思われたか!!?
なんかそれって大きい方でも小さい方でも恥ずかしい・・・(涙)
しかしそんなこと言っている場合ではない。私はすぐに外に飛び出し、庭の塀から身を乗り出し、こちらに向かって車を走らせてきた修理のお兄さんに合図をした。
かくして無事に我が家に到着したお兄さんをお風呂場に案内し、修理道具を抱えて入ってきたお兄さんは、さっそく壊れている個所の確認を始めた。
しばらく確認したあと、お兄さんは『これなら今日持ってきたパーツで治せますので、このまま修理に入りますね!できたらまたお呼びします!』とさわやかに言った。
果たして修理にはどのくらい時間がかかるものなのか・・・
ていうか、また腹下ってきたぞ・・・
くぅ〜めんどくせーー!!
IBSマジでめんどくせーーー!!!
誰か知らない人が自宅に来てるっていうこのタイミングで、
よりによって腹痛の波、来まくりじゃないか。
我が家のお風呂は二階にあるので、お兄さんは二階で修理をしている。
二階のトイレに入って、万が一、不用意に南アフリカの伝統の楽器ブブゼラのような爆音を発してしまうようなことがあったら、今後生きていく自信を失いかねない。
参考:カメルーンを応援する南アファンのブブゼラ
念のため一階のトイレに行こう、もう限界・・・
そう決めて立ち上がったその瞬間であった。
『すみませーん♪』お風呂場から、お兄さんが明るく呼びかける声が聞こえてきた。
え!?
まさか修理もう終わったとかほざき出すんじゃあるまいな!!!???
過敏性腸症候群(IBS)下痢型恒例、自分の腹がピンチなとき、タイミング悪く声をかけられ、相手はただの親切な人だというのに心の中で牙をむかなければいけない状況に陥るという、魔のループに今ハマったことを私は瞬時に理解した。
『あ、はい・・・』ビクビクしながらお風呂場に行くと、案の定、お兄さんは笑顔で『治りました!ちょっと確認してもらえますか?』と言うではないか。
ウゥ・・・腹痛い・・・
その言葉がこぼれ落ちそうになるのを必死でこらえ、お兄さんに指示されるがまま
ユニットバスの栓を開閉するボタンを何度か押し、正常に作動することを確認した。
『あ、大丈夫そうですね!!!!!』
早くこの場を離れたい。
今、お風呂場という狭い空間でお兄さんと二人でいることは、違う意味で非常に危ない。
その気持ちが溢れすぎ、つい、ものスゴイ勢いで『治ってますね!!!大丈夫です!!!!大丈夫です!!!!』と連呼してしまう。
すると、お兄さんが信じられないことを言い出した。
『一度、正常にお湯がはられるか試してみていただいていいですか?』
いや、もういいよ!!
お湯ちゃんとはられるよ!!治ってるよ!!正常だよ!!もう勘弁してよ・・・(涙)
そう言いたい気持ちと腹を抑えて震える手で「お湯はり」のボタンを押す。
ザ――――!と勢いよくお湯が出てきて、湯船にお湯がたまり始めた。
『あ、大丈夫そうですね!!!!!!!!!!!もうマジで大丈夫です』
感情が抑えられなくなり前のめりに言葉を発し始めてしまう自分を止められなくなってきた瞬間、ようやくお兄さんが『はい、これで修理は終了です』と宣言した。
思わずガッツポーズと共に、
よーォ!!!!と一本締めをしたくなる気持ちをぐっとこらえ『ありがとうございました』と冷静にお礼を言った。
するとお兄さんは修理道具を片付けながら『お電話では○○円と言われてると思いますが、僕の方で少しおまけで値引きしますよ!』と言ってくれたのだ。
おぉそれはありがたい・・・この時間を耐えきった天からのご褒美だろうか。
お兄さんが、『一旦、車に戻って伝票の用意してきますね!』と我が家から出て行った瞬間、私はパルクールの選手並みのモーションでトイレに飛び込んだ。
参考画像:パルクール
ウォーーーーーー!!助かった!!!!!
てか、なぜ我が家でこんな目に合わなくちゃいけないんだ・・・憎きIBSめ・・・!!
し、しかし戦いはまだ終わってはいないぞ。
伝票を作ってからお兄さんが戻ってくるのだ。ここは短時間の勝負だ。はやく通常モードになってお兄さんを迎えなければ・・・!
目を白黒させながら腹と戦う。
そして何とか短時間でトイレから飛び出し、急いで焦っていない風の表情を作り、伝票を持って戻ってきたお兄さんを迎えた。
まだお腹からはグルグルと不穏な振動が続いている。すぐにもうひと波来そうな予感がプンプンしている。
サッサと代金を支払ってサッサとお引き取り願いたい・・・
親切にしてくれているお兄さんに、こんな失礼な要望を抱いている自分が嫌だ。
何もかも過敏性腸症候群(IBS)のせいだ・・・くそ!!!
すぐにお兄さんに代金を渡し、お釣りを待っていたのだが・・・
アレ・・?なにやらお兄さんが手間取っている。
お兄さんは当初の金額よりお値引きしてくれたおかげで最初に用意していたお釣りと金額が合わなくなり、手間取っているようだ。ごそごそと集金袋の中の小銭を集めては、『あれ・・?』などと首をかしげ電卓を叩きなおしている。
ゴロゴロゴロ・・・私の腹が再び暴れ始めた。
もう!!もういいです!!
もうおまけはいいですよ!!お気持ちだけで幸せでした。本当にありがとうございました。
元の金額で大丈夫ですからーーー(涙)
我慢できずそう叫び出しそうになった瞬間、うまく計算ができたお兄さんが『あと100円いただければこのお札でピッタリお釣りお返しできます!』と言ったため、小銭がなかった私は急いで子供のお小遣いから100円を拝借するとお兄さんに渡した。
ようやく代金の支払いが終わり、お兄さんは笑顔で帰って行った。
パタン・・とドアが閉まった瞬間、私は再びパルクールでトイレに飛び込み、事なきを得たのであった。
なんでただのお風呂の栓の修理が、こんなに命がけなんだろう・・・。
そしてなんで親切な人が親切に話してくれてる時に、私は腹痛のせいで毎度うわの空にならなくちゃいけないんだ・・・
この過敏性腸症候群(IBS)生活も早20年が近づいているが、こういうピンチがあるたび毎度新鮮な絶望感にかられる。
普段安心して過ごしている我が家も、腹痛中にひとたびこのようなお客さんが来ることになると、緊張感マックスの戦場と化す・・・それが過敏性腸症候群(IBS)下痢型なのである。
ちなみに修理のお兄さんの見解によると今回ユニットバスの栓が壊れてしまった原因は、カビキラーなどの塩素系のお風呂の洗剤を頻繁に使いすぎということと、なによりその洗剤を流し足りないことが続くとユニットバスの栓の中の樹脂が劣化して、しっかり閉まらなくなってしまうことがあるそうだ。ユニットバスをお使いの皆さんは参考にしていただけたら幸いだ。
その夜、暖かいお湯がはられた湯船に浸かりながらぼんやりと昼間の善戦を思い出し、
『お前、今日もよく頑張ったな・・・』と面倒な腹を持った自分をねぎらった私なのであった。