エッセイ

下田海中水族館で蘇った記憶・・・沖縄美ら海水族館をめぐるトイレ騒動

下田海中水族館

先日、静岡県の下田に遊びに行ってきた。

下田へは夏に何度か遊びに来ていたのだが、夏の下田といえば美しい白浜海岸がメインだ。私たちも、海水浴やサーフィン、ホテルのプールなどを目いっぱい満喫したが今回は初めての冬の下田だった。

サーフィンはもちろん白浜を訪れる大きな目的であったが、やはり冬の海は極寒である。長く海にいることができなかったため、今回はあいた時間で下田の観光スポットであるペリーロードや下田海中水族館などを訪れてみた。

ペリーロード
幕末、黒船により来航したペリー提督一行が了仙寺で日米和親条約付録下田条約締結のために行進したのがこの道。
下田市ホームページ

 

下田 ペリーロード

下田 ペリーロード バー

下田 ペリーロード

大人はペリーロードの趣深い風景を味わいながら散策を楽しんだが、やはり子供たちはまだ風情のある街並みよりも水族館に夢中であった。

下田海中水族館

下田海中水族館

イルカやオットセイのショーはもちろん見るだけでも楽しいし、子供たちは間近で触れ合える海の生き物の大喜びであった。
楽しそうにはしゃぐ子供たちを見るのは親としてもとてもうれしい瞬間だ。

そしてその時ふと、子供がまだ小さいころに連れて行った沖縄の美ら海水族館での出来事を、久しぶりに思い出したのであった。

蘇った遠い日の“美ら海水族館”の記憶

それはまだ長女が1歳半の時のことであった。次女はまだ生まれていなかった時代で、私たちはまだ3人家族だった。

沖縄に家族旅行へ行くことになった私たちは、沖縄へ行ったら訪れたいスポットをリストアップして日程を組んだ。やはり、沖縄と言えば美ら海水族館は外せないでしょう♪ということで、当然、美ら海水族館は沖縄でのメインイベントの一つとして予定を組んだ。ここを訪れたことのある友達からは、ジンベエザメが大迫力ですごく良かったよ、とお墨付きももらっていたし私も楽しみで期待に胸を膨らませていた。

いよいよ旅行の日を迎え、私たちは計画していた色々な観光スポットを次々に見て回り沖縄旅行を満喫していた。

そして待ちに待っていた美ら海水族館へ♪

美ら海水族館の前にある広場のトイレの前を通りかかったとき、主人が「ちょっとトイレ寄っていく」と言いだしたため私たちはトイレに立ち寄った。

ファミリートイレが空いていたため、私と1歳半だった長女が先に入り、出てくると入れ替わりに主人がファミリートイレへ入って行った。私と長女はファミリートイレから少し離れたところに立ち、主人が出てくるのを待っていた。

すると、2歳くらいの娘さんを連れた奥様が小走りにやってきて、今主人が入っているファミリートイレへ近づきドアを開けようとしたのであった。

私はその一部始終を遠目から見ていたが、鍵が閉まっていればその奥様も今ファミリートイレが使用中であることに気が付きトイレの前で待機することになるであろうと、あまり気にせずその状況を眺めていた。

だが、次の瞬間、私は目を疑った。

なんと主人はファミリートイレのカギを閉めておらず、2歳くらいの娘さんを連れた奥様によってファミリートイレのドアは全開となったのであった。

ドアが開いた瞬間、ズボンを膝までおろし、こじんまりと様式便座に座っているうちの主人を発見した奥様は「ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!(汗)」とペコペコと頭を下げながら慌ててドアを閉めた。

えぇーーーーーーーーーーーー!!!!?????

沖縄の観光スポットの真ん前の大きな広場にあるこのトイレで!!
不特定多数の人たちが大勢行きかうこの公衆トイレで!
うちの主人は鍵も閉めないで大きい方をしていたのか!!!!
家じゃあるまいし!!!!!なんていう度胸なのだろう。

しかも出てくるなり、「なんで自分が入っているのに!だれか開けようとした時に止めない!?」と逆切れしているではないか。

いやいやいやいやいやいやいやいや・・・!

ふつうは公共のトイレは鍵をかけて入って当然なのだ。
誰かがドアを開けようとしたところで鍵が閉まっていれば、使用中だなと理解しおとなしく順番を待つ、という流れになるだけの話だろう。

何を観光地ど真ん中の公共のトイレで鍵も閉めずにしっぽりとウンコに集中していやがるんだ。

逆切れにもほどがある。
世界的レベルでみても最も理不尽な逆切れの部類に入るだろう。

私には1歳児の面倒を見ながら鍵もかけずにウンコをしている主人の面倒まで見なくてはいけない義理はない。

だがプリプリと逆切れしながら早歩きでその場を立ち去ろうとする主人。私は娘を抱っこし慌てて小走りで追いかける。

しばらく主人の背中を追いかけているうちに、私の心の底からフツフツと湧き上がるように、こらえなくてはいけないのだろうがこらえきれない笑いが込み上げてきた。

おそらく人生の中で一番目立ってはいけないであろうこの日に、この人は・・・

・・・なんて派手な格好をしていやがるんだ・・・!!!!

よりによってこんな日に、本日美ら海水族館を訪れている全男性陣の中で最も目立つと言っても過言ではない、眩しいほど鮮やかな真っ赤なショートパンツでコーディネートしてきてしまっている主人・・・

先ほどトイレのドアを開けた奥様はきっと水族館の見学中、イヤでも随所でこの真っ赤なショートパンツを発見し、そのたびに「あ、さっき鍵かけないでウンコしてた人だ」と認識することになるのだろう。

くぅ・・・
実に面白い!!!

本当は腹を抱えて笑いたいところだが、逆切れしている人を笑ってさらに怒らせるという二次災害を防ぐため私は必死に笑いをかみ殺し、ニヤニヤがあふれ出そうになる顔を、うつむいて懸命に隠した。

しばらくプリプリしていた主人だが、沖縄くんだりまで来てこんなくだらないことで機嫌を損ねているのは良くないと自分でも気が付いているようだ。一生懸命気分を変えて、リセットしようとしている様子が見受けられる。

私たち夫婦は公開ウンコ事件のことは無理やり心の中から追い出すことにし、気を取り直して美ら海水族館を楽しむことにした。

興味深い海の生物の展示を次々にみて回るうちに、私たちは先ほどの事件のことは徐々に忘れ、平和な時間を過ごしていたのだった。

深海の生物の展示を見終わるまでは・・・

深海の生物の展示ゾーンが終わるころ、突如として私のお腹は急降下を始めた。
何の前触れもなく、である。

私は20年近く前から、過敏性腸症候群(IBS)を患っている。

IBSとは、血液検査や大腸内視鏡検査などで腸に異常が認められないにもかかわらず
下痢や便秘を慢性的にくりかえす疾患であり、私の場合はメインが下痢で展開される通称“下痢型”だ。トイレに行けない状況で突然お腹の急降下に見舞われるなんてことがざらにあり、日常生活に支障をきたす疾患だ。

つい先ほどまで主人の大失態をせせら笑っていた私は、今度は突然急降下してきた自分の腹に顔面蒼白になっていた。

これはバチだろうか?
トイレで辛い思いをした主人をあざ笑った私へのバチなのだろうか?

いや、もうこの際、バチだろうがなんだろうが知ったこっちゃない。
とにかく今はトイレだ。反省はそのあとだ。

必死に走りやっとの思いでたどり着いたトイレだが、広い館内とお客さんの数に対して個室が少ない・・・!!! (IBS主観調べ)

なかなか回ってこない順番に冷や汗が出てきた。

毎度のことながら、IBSによるお腹の急降下で追いつめられると、トイレの行列に並びながら“今自分が、トイレに入る以外でできることは!?”と悪あがきをし出し、その結果、精神統一と称し「シュー!!!!」などとやたらとデカい音を出しながら複式呼吸を試みたり、自分の腹に催眠をかけようと薄目になってブツブツとつぶやくなど、挙動不審な動きをする危険な人物に成り下がってしまうことにウンザリする。

この時も例にもれず、ありとあらゆる不審な動きをしながら行列に耐え、やっと回ってきた順番に、最終的にMr.ビーンのような動きになりながら挙動不審全開で個室に飛び込んだのであった。
Mr.ビーン

ふぅ・・・間一髪だ。

しかし、もういいだろうと個室を出ようとするとまたなんとなくお腹が痛い気がしてくる。
一度出てしまったら、また列に並ばなくてはいけないのだ。

せっかく今個室というオアシスにたどり着いたというのに、ここでみすみす「個室に入っている」という権限を手放す勇気がでない。

万が一、いま個室からでてしまい、まだ腹痛が治まらずもう一度並びなおし、今度は間に合わずアウトになってしまったら・・・もうMr.ビーンどころでは済まないことになる。

そう考えると、何度も個室から出ようとドアに手をかけてはまた便座に座りなおす、の繰り返しにはまってしまい、気付けば美ら海水族館のトイレの個室でかなりの長時間を費やしてしまった。

やっとの思いで個室から出てきた私は、一日分の全体力と精神力を使い果たし、げっそりとやつれて切っていた。

おそらく主人の公開ウンコ事件を嘲笑していた1時間前と比べると、ほうれい線も若干深くなっていたことだろう。

その後、いよいよ今回の旅行のメインのひとつとして非常に楽しみにしていたジンベエザメとご対面の瞬間を迎えたのだが、私の目は完全に生気を失い、ただゆっくり泳ぎまわるデカい生き物を映し出すガラス玉と化しており、その感動がダイレクトに心に響いてくる感覚を味わうことが全くできなかったのであった。

ただうつろな目つきでぼんやりと水槽を眺め、ジンベエザメにぴったりとくっついて泳ぐコバンザメを見て「人間の世界にもこういうヤツいるよな・・・好かん・・・。」と、うっすら考えたことは記憶している。

そして、1歳児だった娘に大きいジンベエザメやイルカを見せて喜ばせてあげたい!と計画していた親の気持ちを知ってか知らずか、娘が美ら海水族館の展示生物の中で一番喜んでくいついていたのはゲンゴロウであった・・・。

かくして私たち夫婦は、遠い沖縄の地でトイレとの強烈な思い出をそれぞれ心に焼き付け、美ら海水族館をあとにしたのであった。

今回の下田海中水族館で、はしゃぐ子供たちをながめながら久々に思い出した「8年前の美ら海水族館」での一連のドタバタ。

今回、下田海中水族館では不要な恥をかくこともなく楽しく海の生き物を見物することができ、ほっと安堵したと同時に、あれから8年の年月が過ぎても全国各地で腹を下しトイレに駆け込んでいるという変化の無い自分には、お前もなかなか根気があるな・・と懲りない自分を褒めてあげたい気持ちになったのであった。

ABOUT ME
富岡紗和子
神奈川県湘南在住、占い師(帝王命術売占い鑑定師・四柱推命鑑定師)ラジオパーソナリティ・エッセイ作家・法人役員(役員暦24年)の富岡紗和子です。 現在、二人の娘を持つ母でありサーフィンとビールをこよなく愛するアラフィフ女子です♪ ⇒ ⇒ 詳しいプロフィールはこちら

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